何となくお腹に良さそうなイメージがある食物繊維。
「繊維」と言うだけあって野菜さえ食べておけば大丈夫な気がしますが、実は適当に野菜だけ食べていても食物繊維の恩恵を十分に受けることは出来ません。
食物繊維には2種類あり、腸内環境をバッチリ整えるためには、この2種類の食物繊維を両方摂る事が大切なのです。
今回は、2種類ある食物繊維の解説と、両方摂るためにおすすめな食べ物や料理方法の紹介をしていきますよ。
食物繊維は消化できない炭水化物
そもそも食物繊維の正体は何なのかというと、人の体内では消化できない炭水化物のことです。
炭水化物というとご飯やパンのイメージがあり、糖質に分解・吸収されてエネルギーになる気がしますが、食物繊維は吸収されません。
人が持つ消化酵素では分解することができないので、吸収されること無くそのまま腸まで届きます。

そのため、食品の成分表を見る時は炭水化物の量を見るのではなく、糖質と食物繊維で分けて見るのがおすすめです。
そんな食物繊維はさらに2種類に分けることができます。
2種類の食物繊維
食物繊維には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の2種類があります。
その名の通り、水に溶けるか溶けないかの違いですが、腸内での働きは同じではありません。
1つずつ詳しく見ていきましょう。
水溶性食物繊維
- 水に溶ける
- 食べた物の粘りけを増して腸内の動きをゆっくりにし、糖質や脂質の吸収を緩やかにする(血糖値やコレステロール値が急上昇しない)
- 腸内細菌のえさとなり、善玉菌が増えて悪玉菌の増加を防ぐ
【色々な水溶性食物繊維と含有量が多い食べ物】
ペクチン | 柑橘類、りんご |
ガム質 | 大麦、大豆 |
グルコマンナン | こんにゃくいも |
フコイダン、 アルギン酸 | 海藻のぬめり成分 わかめ、こんぶ、もずく、めかぶ |
イヌリン | ごぼう、菊芋 |
水溶性食物繊維は海藻類のネバネバに多く含まれていて、主に腸内環境を整える効果があります。
お腹の中で粘りけを持つので腹持ちも良くなり、糖質やコレステロールの吸収を抑えてくれるので、ダイエットにはもってこいです。
にんじんやキャベツといったメジャーな野菜だけではうまく摂れないので気を付けましょう。
不溶性食物繊維
- 水に溶けない
- 水を吸って膨らみ、便のかさを増やす
- 増えた便が腸壁を刺激して排便をうながす
【色々な不溶性食物繊維と含有量が多い食べ物】
セルロース | 穀類、野菜類、果実類 |
ヘミセルロース | 穀類、野菜類、果実類 |
キチン | カニやエビなどの甲殻類の殻 |
リグニン | カカオ豆、ピーナッツ |
不溶性食物繊維は穀類や野菜に多く含まれていて、主に排便を助ける効果があります。
水を吸って便を柔らかくしてくれるので、便秘の時には強い味方になってくれます。
また、不溶性食物繊維は基本的に植物の細胞壁の材料なので、噛んだときに固く感じる物が多いです。
そのためよく噛む必要があり、ゆっくり食べる事で満腹中枢が刺激されて、少量のご飯でも満足しやすくなるという嬉しい効果もあります。
水溶性と不溶性を両方摂ろう

今見てきたように、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維では腸内での役割が微妙に違います。
だから野菜を食べていても、不溶性食物繊維ばかり摂ってしまって水溶性食物繊維をうまく摂る事ができず、腸内環境の改善を万全に行うことができないのです。
しかし中には、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維を両方とも多く含んでいる頼もしい食材もあります。
その代表がごぼうや大麦、オートミールです。
水溶性 食物繊維 | 不溶性 食物繊維 | |
ごぼう | 2.7g | 3.4g |
大麦 | 4.3g | 3.6g |
オート ミール | 3.2g | 6.2g |
もちろんこれらだけを食べていると他の栄養素のバランスが偏ってしまうので、海藻や野菜も含めて色々な食物繊維を摂るようにしましょう。
おすすめは具だくさんのお味噌汁

食物繊維をたくさん摂りたい時におすすめの食べ方は、具だくさんのお味噌汁です。
お味噌汁なら海藻でも野菜でも豆でもきのこでも何を入れても美味しいですし、熱を通すので野菜のかさが減って食べやすくなり、たくさん食べる事ができます。
お出汁を効かせたりとろみを付けたりすれば塩分調整もしやすいので、料理に迷ったらとりあえず具だくさんのお味噌汁を一品追加してみましょう。
とっても簡単に不足しがちな食物繊維を補うことができますよ。
目標は1日25g!
精米されたお米やお肉を中心に食べるようになった現代の食生活では、食物繊維の摂取量はめっきり減ってしまいました。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、一日あたりの「目標量」は、18~64歳で男性21g以上、女性18g以上です。
さらに2020年にセント・マイケルズ病院が行った研究報告では、1日に25g以上の食物繊維を摂ると、食事内容に関係無く体重減少効果が現れたと発表されています。
しかしその目標に対して、私たちは1日に13~14gしか食物繊維を摂れていないと言われているのです。
そんなに不足していたら、腸内環境が荒れて便秘になったり、糖質やコレステロールがガンガン吸収されて太ってしまうのも納得ですよね。
1食あたり8gを意識して、毎日の食事内容を見直してみましょう。
まとめ
2種類の食物繊維についての解説と、その両方を摂るためにおすすめな食べ方について紹介してきました。
- 食物繊維には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の2種類がある
- 水溶性は海藻類のネバネバに多く、腸内環境の改善に役立つ
- 不溶性は穀類や野菜類に多く、排便を助ける
- 具だくさんのお味噌汁がおすすめ!
- 1日25g以上を目標に!
食物繊維は昔は何の栄養にもならない厄介者とされていたそうですが、今では健康やダイエットに欠かせない存在となっていますね。
五大栄養素である糖質・脂質・たんぱく質・ビタミン・ミネラルに並んで「第6の栄養素」とまで呼ばれるようになった食物繊維。
毎日しっかり摂って、快適なお腹を手に入れましょう。